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各駅停車の行先は… 鉄道旅行記中心のブログです。

【駅がたり】 阪堺上町線 住吉公園駅

3月から予告していた「駅」に関する新コーナー、ついにスタートです。

その名も「駅がたり」

 

日本中、津々浦々に存在する個性的な駅もそうでない駅も…

…いや、没個性的な駅なんて存在しないだろう!

というのがこのコーナーのスタンス。

 

鉄道駅とその周りについてtakapureの怪しい視線で紹介していきます。

 

第一回は「近すぎる連絡駅」

阪堺上町線 住吉公園駅について特集。

なんと初回から廃駅となってしまいました。

(ほんとは稼働中にアップしたかった)

 

住吉大社参拝客輸送でにぎわう最後のお正月に取材しました。

 

 

駅データ

【駅名】住吉公園

【所属】阪堺電気軌道 上町線

【所在自治体】大阪市住吉区

【開業】1913(大正2)年7月2日

【廃止】2016(平成28)年1月31日

【構造】地平駅、頭端式2面2線

 

南海本線住吉大社駅の高架横にひっそり佇む住吉公園駅。

駅前を横切る道を行けば住吉大社の鳥居の正面にたどり着きます。

まさしく住吉大社への参道そのもの。

駅前は門前町の賑わいを見せます。

駅の西側には駅名の由来となる住吉公園が広がります。

南海本線の駅も1979年まで住吉公園駅を名乗っていたそうです。

駅舎とは反対側から駅全体を望みます。

線路はカーブして南海線と寄り添うようにホームが設けてあります。

振り返って、先に電車が停まっている位置に次の「住吉」電停があり、

そこで阪堺線と合流・交差して上町線は東へと寄っていくのです。

 

そう、ちょうど先日役目を終えた上町線の住吉〜住吉公園の区間

距離にしてたった200m、阪堺線との直線距離は100mにも満たない位置にある盲腸線だったのです。

 

事実、阪堺線上には「住吉鳥居前」という電停があり、住吉大社参詣もそちらが便利とされています。

 

開通経緯を見るとこれも面白いことに、

1902年12月27日 現在の住吉電停の位置まで大阪馬車軌道が開業(現上町線)

1911年12月1日 (初代)阪堺電気軌道恵美須町から住吉大社の前を経由する路線を開業。(現阪堺線)

1912年2月17日 南海鉄道住吉公園駅開業

1913年7月2日 上町線 住吉神社前停留場(後に阪堺線住吉停留場に統合)から住吉公園まで延伸開業

ということで、住吉〜住吉公園間は阪堺線開業より後に新設された南海住吉公園駅のために後付けで開業した区間であることがわかります。

 

それもそのはずで、当時の上町線も会社合併を経て南海の路線の一つとなっており、

自社線同士を接続させるのは必然の流れだと思われます。

ちなみに恵美須町からの阪堺線は(初代)阪堺電気鉄道の路線で、これより少し遅れて南海に吸収されています。

 

なるほど、上町線阪堺線は出自が違う上に阪堺線においては南海とライバル関係だったわけですね。(記事書きながら勉強)

これだけ近い位置に終点の駅ができたのも納得(?)です。

 

レポートに戻りましょう。

在りし日の上町線乗り場。

駅舎に入って薄暗い通路を進んだ奥にホームがあります。

路面電車なのでもちろん改札なんてありません。

 

 

駅舎の中には飲食店が一軒がんばっていました。

この駅舎と運命を共にしたのでしょうか。

 

 

阪堺上町線のダイヤは6分間隔で、2009年より天王寺駅前から浜寺駅前行きと住吉公園行きが交互に運転されていました。

ところが『あべのハルカス』開業に伴う2013年3月のダイヤ改正にて日中の住吉公園行きが阪堺線我孫子道行きに振り替えられ、住吉公園駅は住吉〜我孫子道間の増発と引き替えに日中列車が来ない駅となってしまったのです。

 

その本数、平日5本、休日4本。

駅にも、「これ以外の時間帯は近接する住吉鳥居前電停を利用ください」とあります。

代替の効く電停があっては、残しておく理由も少なくなってきます。

また、隣の住吉電停には阪堺線との分岐と平面交差がありますが、

その部分の老朽改修に費用がかかることを理由に、

阪堺電気軌道は当該区間の廃止を決めました。

 

それでも、今年の正月も住吉公園は同じ賑わいを見せていました。

住吉大社参拝客輸送で全線が大増発される正月三が日。

日中50本もの臨時列車が入線しました。

今後、それらが我孫子道行きに変更となるのか、阪堺臨時運行本数が削減されるのかはまだわかっていません。

 

駅名票とレトロな屋根。

発車票は先発の案内のみ。

「うしろ」とあるので同じホームに複数の電車が停まったときに対応しているようです。

路面電車ならではですね。

出発信号機は2灯式で、ホームを出てすぐにシーサスクロッシングがあります。

運転要員の駅員の小屋があり、ポイントなどの操作を行っているようです。

ホームには戦前からあるという防火水槽があり、金魚が飼われていました。

利用客から聞こえるのは「ここからなら座れる」という声。

住吉大社帰りに住吉鳥居前や住吉電停は使わず、あえて住吉公園から乗るという使い方が大多数のようで、いわゆる「穴場」の始発駅と化していました。

そういった使い道でも利用客が居るのならこの駅としても本望だったのでは。

 

こうして、「都会の秘境駅」、「南海電車との接続駅」、「ちょっと歩けばある始発駅」など多くの顔を持った住吉公園駅は、1月30日、多くの人に見送られて102年と少しの歴史に幕を下ろしたのでした。