Local bound for…

各駅停車の行先は… 鉄道旅行記中心のブログです。

日本一長い路線バスに乗ってきた。

お久しぶりでございます。

PCが故障から復帰しまして、更新を再開いたします。

 

新年最初の乗車記は、日本一の記事です。

日本一長い距離を走行する一般路線バスである

奈良交通の八木新宮線に乗ってきましたので、

その模様をお送りします!

 

 

 

2023年11月4日(土)

 

奈良県橿原市

近鉄大阪線橿原線が交わる乗換駅、大和八木駅にやって来ました。

ここから、日本一長距離を走る一般路線バス

奈良交通が運行する八木新宮線の旅は始まります。

 

北口と南口にバス乗り場がありますが、

八木新宮線は南口の乗り場から発着します。

 

 

朝の9時の発車案内。

イオンモールなど地域密着な行き先が並ぶ中、

一番下の段に表示される『新宮駅』の文字。

土地勘のない人から見れば当たり前の並びかもしれませんが、

新宮がどこかわかっている人が見れば極めて異質な表示です。

いや、下市口駅も十分遠いと思うんですけどね。

 

 

大和八木駅南側のロータリー。

奈良交通の他の路線に使われるバスが待機しています。

 

大和八木駅南口から発着するバスの運行系統図。

一つだけ異様に伸びる路線が目に入ります。

これが八木新宮線です。

 

 

奈良交通 八木新宮線

八木新宮線は、奈良交通が運行する路線バス。

公式には『八木新宮特急バス』といわれています。

奈良県橿原市大和八木駅から大和高田市五條市十津川村和歌山県田辺市

を経由して、JR紀勢本線新宮駅まで169.8kmを走行します。

停車する停留所の数は最大で168あり、単一の系統で一般道のみを走行する

路線バスでは日本一の走行距離となっています。

路線のほとんどで国道168号線を走行し、全線の所要時間は驚異の約6時間半です。

一日に3往復が運行され、土休日にはうち1往復が停車停留所を大幅に絞って

観光特急やまかぜとして運行されています。

 

この日は、大和八木駅発の初便、9時15分発の新宮駅行きに乗車します!

 

 

出発の10分ほど前、使用されるバスが待機場に入ってきました。

あまり休むことなく、乗り場の方へ入ってきました。

使用されるのは2015年式の日野 ブルーリボン ノンステップバスです。

奈良交通の他路線で使用されるバスと塗色が異なります。

 

車内の様子。

ノンステップバスですが、長距離路線なりに特別仕様となっており、

座席は背ずりの高いハイバックシート。できるだけ多く数がとられ、

座席後ろにはドリンクホルダーを装備。Free Wi-fi も飛んでいます。

近年の路線バス車では珍しくカーテンが設置されています。

 

先代の車両はU代の日野 ブルーリボン ツーステップ車。

トップドアで座席を多く配置した特別仕様車で、2015年に置き換えられました。

 

 

9時15分、定刻で大和八木駅を出発。

乗客は15名程度で立ち席乗車はありません。

 

バスは橿原市内の中心部を進みます。

 

この地域のランドマーク、橿原神宮の案内。

大和八木駅からは近鉄電車でも3駅ほどです。

 

さすがに中心部は交通量が多く、渋滞ぎみになります。道幅は広くありません。

 

イオンモール橿原

国道上のバス停に停車します。

構内まで乗り入れる路線が15分に1本ほど

頻発運行されています。

このバスでも、ここや途中の停留所での乗り降りがありましたが、

いったいどれだけの人が、めちゃくちゃ遠い行き先のバスに乗っていることを

わかっているか、ふと気になります。

 

大和高田市に入り、近鉄高田市駅

近鉄大阪線大和高田駅ではなく、南大阪線高田市駅です。

大和八木駅から20分ほどで着きますが、ここまで直通するのはもうこの系統だけです。

なおバスは高田市駅手前から国道168号線に入り、十津川村を経て新宮まで

ひた走ることになります。

 

さらに10分ほどで忍海(おしみ)。

奈良交通の葛城営業所構内にバス停があります。

八木新宮線を担当している営業所であり、バスの寝ぐらです。

近鉄御所線の忍海駅が近くにあります。

 

近鉄御所駅

近鉄御所線の終点駅です。

大和八木駅からの所要時間は35分ほど。

 

近鉄御所駅を過ぎると、ここまで家々が続いていた景色ではなくなり、

山が近くなってきます。

五條市との境でまず一つ峠を越えるようです。

 

かもきみの湯。

御所市内にある温泉施設で、国道から少しそれますがバス停が設けられています。

 

山を越え、五條の市街地へと下りていきます。

京奈和自動車道が見えます。

JR和歌山線の線路も並行していて、

大阪直通便もあるため、すごいところから来てるなと思います。

 

10時28分、五條バスセンターに到着。イオンに併設されています。

ここで10分程度、最初の休憩がとられます。

バスは10分ほど遅れていましたが、

そのままスライドして休憩はしっかりとられます。

 

運賃表。八木からはすでに1000円を超えています。

ディスプレイの半分には所要時間の案内があり、桁違いの表示がされています。

新宮駅までまだ5時間10分かかります。

 

バスの経由表示。

 

バスセンターの乗り場案内。

五條バスセンターはこの地域の路線の運行拠点となっていて、

新宮行きと同経路で複数の路線が南方向へ運行されています。

 

また、五條バスセンターでは新宮駅まで通し乗車する人の人数確認が行われました。

全線乗車すると贈呈される記念品の兼ね合いかと思われます。

 

 

 

10時38分に五條バスセンターを出発。

この時点で乗客は9人となりましたが、

次にすぐ停車したJR五条駅で7名ほどが乗車しました。

五条駅が最後に経由する鉄道駅で、ここから先、公共交通機関はバスでしか

辿り着けない所になります。

 

 

 

五條市街地を抜け、吉野川を渡ります。

バスは、この吉野川の支流、丹生川に沿って山へと入って行きます。

 

五條病院。

まだまだ奈良県は南部へただっ広く広がるというのに、南和地区で一番大きな

病院です。

八木新宮線の他、広域通院ラインというバスが近鉄吉野線福神駅五条駅を経て

十津川村へ平日のみ一日一往復設定されていて、八木新宮線と合わせて四往復で

アクセスを担っています。

 

景色に緑が増えてきます。

 

このあと、賀名生和田という集落に入ります。

近くにある西吉野農業高校にバス停が設けられていますが、

この便は経由をしません。(平日のみ停車)

国道から逸れた位置にあるため、この便はこの系統の最大の運行距離、停車停留所

ではないことになります。

 

丹生川に沿ってバスは進み、時折道路の上を高架橋が横切ることがあります。

これは旧国鉄未成線である五新線の廃線跡

五条駅新宮駅を結ぶ計画で建設が進められたものの、五條市内の多くで路盤が

完成したところで鉄道としての工事が凍結されました。

この路盤をバス専用道として活用し、国鉄バス→奈良交通五條市城戸まで路線を

運行しましたが、2009年に設備の老朽化を理由に廃止となっています。

バス専用道の終点となっていた城戸に到着。

五條バスセンターから城戸まで今も区間便といえる系統が運行されていますが、

それもここまで。ここから厳しい峠越えとなります。

バスは天辻峠に入ります。

十津川村を秘境たらしめた峠であると自動放送が語ります。

 

つづら折りの勾配を登ったのち、片側一車線ずつギリギリの幅の狭い

天辻トンネルで山を貫きます。

これでも新道であり、旧道はより険しい峠道となっているようです。

 

天辻峠を越えると、阪本の集落に入ります。

ここもまだ五條市で、五條市も合併を重ねてかなり大きな自治体となっています。

 

五新線のトンネル抗が見えます。

五新線の路盤はここで尽きています。

もし五新線が鉄道で開通していたらどんな路線になっていたのでしょうか。

 

阪本から大塔地区まではダム湖と川沿いを行く区間。道路改良が進んでいない、

道幅が狭く、地形に忠実に急カーブの続く区間となっています。

交通量も多く、対向車待ちでしばしば停車を強いられます。

 

時折、高架橋を用いた改良区間があります。

対岸を旧道が走っていました。

 

五條市役所の大塔支所へ立ち寄るために旧道へ向かいます。

このあたりは2011年8月の紀伊半島豪雨災害で地滑り等の被害が大きかった所です。

 

旧道中にある集落、閉君。高架橋で通り過ぎたので、律儀に旧道を戻ります。

 

バスは乗り入れ、停留所に作られた転回場で折り返しますが誰も乗ってきません。

 

 

 

出発から2時間半。ようやく十津川村に入りました。

日本一大きな村。

抜けるのに何時間かかるでしょうか。

 

12時05分、上野地に到着。15分の休憩がとられます。

五条駅からの客が何名かここで下車。

 

歩いて5分かからない所に谷瀬の吊り橋があり、渡ってみることができます。

高さ54m、長さ297mで、十津川に架かる日本最長級の吊り橋(人道橋)です。

実際に渡ってみましたが、まあよう揺れます。

 

土産物屋もあり、ちょっとした買い出しもできますよ。

 

 

上野地バス停。

 

十津川村営バスと経路が重なることになります。以前はこれも奈良交通直営で

運行されており、現在は運行業務を委託されている形です。

 

狭い。

 

上野地を出ると、風屋ダムダム湖沿いの未改良区間を走ります。
風屋ダムを過ぎると、十津川があまりに蛇行をするため、

トンネル・橋梁で山をぶち抜く改良区間となります。

 

13時10分、十津川村役場。2名の乗車がありました。

役場があるからといって特別このあたりが栄えているわけでもないようです。

温泉地温泉という温泉地になっています。

手前の十津川高校最寄り、込之上で

上野地から乗車と見られる学生の下車がありました。

 

ちょっとでも集落へ立ち寄るためバスは旧道へ。

 

めちゃくちゃ狭い旧道。

この道で小原という集落へ立ち寄ります。

 

インターチェンジみたいなアプローチで新道へ再合流。

 

そして再び旧道へ。今戸という集落へ立ち寄ります。

 

閉君と同じく折り返し。

かつてはこの旧道を運行していましたが土砂崩れで不通となったままなのだとか。

長距離バスとはいえ地元民優先の運行に頭が下がります。(なお乗車は…)

 

13時30分、十津川温泉に到着。

奈良交通十津川営業所があり、村営バスの拠点となっています。

広域通院ラインはここまでの直通です。

ここで10分間、最後の休憩。足湯や温泉販売スタンドがあります。

 

温泉に宿泊していたと見られる観光客が7名ほど乗車し、バス後ろ半分の座席が

相席となり埋まります。

東京から来た観光客で若く、チョイスが渋いと思いました。

そこからさらに10分ほどのホテル昴からも7名ほど乗車。

この辺りまで来ると、鉄道駅のアクセスは新宮へと向きます。

気付けばもうバスに四時間半乗っていることになります。

あと2時間!もう少し!(錯乱)

 

 

 

バスは引き続き十津川沿いに走ります。

川沿いがすぐ山で、平地はどこにもありません。

途中、歩いてたら偶然バスが来た感じの外国人ハイカーが2名乗車。

さらに八木尾から日本人ハイカーが7名乗車。

この辺りはもう熊野古道とそれに付随する山々です。

 

 

この辺りの国道168号線改良区間は七色高架橋といわれます。断崖が続くこの区間に 1995年に開通した延長1.7kmの高架橋です。

 

十津川村最後の集落、七色。

 

14時15分頃、和歌山県に入りました。

十津川村、走り抜けるのに2時間半かかりましたね。(うち25分休憩)

自治体名は田辺市で、こちらも合併を重ねて超巨大化した自治体です。

十津川は熊野川へと名前を変えます。(同じ川なの知らなかった)

 

 

熊野本宮大社

世界遺産となった熊野古道観光の一大拠点となっていて、

日本人より断然、外国人観光客がわんさかいました。

これから八木新宮線は付近の温泉地を経由するため、このバスにも外国人観光客が

大量乗車し、大和八木駅出発以来初めて満員となりました

 

この鳥居の写真を撮った瞬間、隣に座っていた欧米人親子からネイティブの

「Good Job!!」が飛んで来ました。笑

 

崖崩れによる道路通行止めの影響で迂回運行となりました。

該当区間は道が狭く代替路がありません。

本来の経路が迂回路のようになっているため、国道を進んだあと逆から進入。

いったん停留所を通過しながら湯の峰温泉へと向かいました。

 

湯の峰温泉を通り過ぎて何もないところで転回。

他のバス会社が使っている転回場だそう。

 

湯の峰温泉できれいに外国人観光客たちは下車。

付近の温泉で一番風情があり人気のようです。

日本人の観光客が乗車してきて座席が半分程度埋まるほどになりました。

 

湯の峰温泉へ至る区間がこの路線で一番山深い区間

バス一台分の道で林の中を進みます。

もちろん一方通行ではありませんので対向が来れば終わりです。

 

川湯温泉で少し下車。

 

ラストスパート、熊野川沿いをバスは進みます。

和歌山県に入ってからは地元のバス会社が数社並行して路線を持つため、細かい

停車はそちらに任せて奈良交通のバス停はかなり少なく設定されています。

特に神丸停留所から新宮市街に入った新宮高校前まで30分以上無停車で走り続けます。

確かに集落が川の反対側にあったりで家は皆無なんですが。

 

新宮市街に入り、新宮高校前に到着。

もう夕方のようです。

 

 

そして…

 

 

とうとうディスプレイが新宮駅を表示しました。

運賃は驚異の5350円!

ICカードが使えるのですが、運賃箱に5千円札をぶち込む実績解除をしたかったので

現金でお支払い。

5千円札は運転手さんが手で受け取ってくれました。笑

 

到着は16時04分。所要時間は6時間49分。

迂回運行と外国人対応の影響で17分遅れで到着しました。

新宮駅で下車したのは10名。うち、大和八木から乗り通しは5名でした。

運転手さんは一人乗務。本当にお疲れ様でした。

迂回運行してるので結局、本来よりさらに長い距離を走行したことになりましたね。

 

感想としては、やっぱりお尻が痛い

道があんまりよくないのでしょっちゅうバウンドするので。

あとは、道路改良の歴史が見られるところがよかったかな。

国道168号、まだまだ各所で絶賛工事中で、どんどん道がよくなることに期待。


乗車証はもらえなくなりますが、途中下車できるバスハイク乗車券も発売中。

良い子は十津川温泉あたりで泊まったりしましょう。

私は最終の『くろしお』で日帰りしました。



f:id:takapure1002:20231115000505j:image

広げると長~~~い路線図と記念乗車証。

 

 

長文、お付き合いいただきありがとうございました。