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宗谷本線の普通列車乗車記(前編)。【いざ鉄路で最北へ④】

北海道の稚内に向かう旅行記、旅の2日目。

旭川から、いよいよ宗谷本線に乗車します。

前日は新幹線・特急を駆使して急いで参りましたが、

この日の乗車は普通列車

乗り鉄なら一度は乗りたい(?)あの普通列車です。

(余すことなく紹介したいため、記事を前後編とします!)

 

 

2023年9月3日(日)

 

ヲタクの朝は早い。現在時刻は朝の5時50分です。

乗車するのは宗谷本線の始発列車です。

 

 

まずは、宗谷本線とは何ぞや?

 

 

JR宗谷本線

宗谷本線は、旭川から、北海道最北の町である稚内を結ぶ259.4kmの鉄道路線

ほぼ全線が単線・非電化の地方交通線ですが、

遠い最北の町へアクセスすべく特急列車も運行されています。

列車本数としては北へ向かうほど少なくなっていきますが、

途中の名寄までは比較的多くの列車が運行されています。

1980年台までは途中駅で接続路線が複数ありましたが、

支線や枝線といえる路線は全て廃止され、長大な一本道となっています。

沿線概況は記事で存分に紹介するつもりです。

 

そんな長大な宗谷本線、特急列車はともかく普通列車は運行区間が原則的に

細切れとなっていますが、直通列車が片道1本のみ存在します。

それが今回乗車する普通列車です。

 

 

旭川駅を6時03分に出発する普通列車 稚内行きです。

 

旭川 6時03分 → 稚内 12時07分 普通 稚内行き (321D~4323D~4325D)

259.4kmを6時間4分かけて走破する普通列車

 

実はこれ、特別料金不要のJRの列車で3番目に長距離を走る列車なんです。

しかも、1位はJR西日本の新快速電車(敦賀米原経由~播州赤穂)、

2位も同路線の快速電車(上郡~米原経由~近江塩津)ですが、

上位2つは速達列車かつ、全区間乗車するためには車両の乗り移りが必要(途中駅で

増結が行われ、さらに始発駅からの車両が途中で解放される)となるため、

ずっと乗り続けられる鈍行列車となるとこの列車が日本一となります。

途中で列車番号が2回変わりますが、旅客案内上これは1本の普通列車です。

 

日本最北端へ向かう日本一の鈍行列車。

これは期待が膨らみます。

私も宗谷本線(新旭川以北)には初乗車です。

 

列車は2両編成。道北・道東の端で活躍するキハ54形気動車(500番台)です。

車両中央部には転換クロスシート、両端部がロングシートという座席配列です。

混雑対策の工事でクロスシートの割合が減少しています。

こちらのクロスシートは0系新幹線の廃車発生品を使用しているそうです。

 

この車両のクロスシートはすでに全ての列に人が座っていましたが、出発直前に

移動された方がいて、進行方向右側のクロスシートに座ることができました。

 

国鉄末期に製造されたキハ54形500番台車、このちょっと豪華な座席は

1990年代の取り替えで設置されていますが、後ろに連結された車両については

特急型気動車から発生した転換できないクロスシート(集団見合い式配列)となって

いて、座席だけでも沼にはまりそうな車両です。

 

6時03分、定刻通り旭川駅を発車しました。

宗谷本線 6時間の旅の始まりです。

車内、クロスシート部には、いかにも長距離乗車しそうな風貌の人(同業者)ばかり、

地元利用者は数人といった様子で出発です。

 

宗谷本線、出だしはなんと高架の複線電化区間を走行します。

旭川四条駅も高架駅。

次の新旭川駅までは北見・網走方面の石北本線の列車も走行すること、

新旭川駅の先に車両基地があり、函館本線で使用される電車も走行することから

複線電化区間となっています。

 

新旭川石北本線が分岐し、さらに走って旭川車両基地となります。

電化区間はここまでで、ここから先は単線・非電化となります。

 

ラッセルヘッドがいっぱい。

これも北海道らしい風景です。

 

旭川から14分、永山駅。

旭川から続く市街地はここまでで、折り返し列車も設定されています。

 

永山新川を渡り、永山駅から2kmしか離れていない畑の中にある北永山駅

この駅がこの普通列車唯一の通過駅で、全力で通過しました。

 

名寄までの宗谷本線は、塩狩峠区間を除いて平野部を走り、線形も比較的良いです。

そのため、高速化工事が行われて特急列車は最高時速120km/hで走行します。

(一連の不祥事による減速以前は時速130km/h)

普通列車も駅間が長ければ飛ばします。

 

2021年3月のダイヤ改正で名寄以南の普通列車でキハ40系が使用されていたものが

H100形に置き換えられ、同時に利用不振駅が宗谷本線だけで12駅廃止されました。

名寄以南では5駅が廃止となりましたが、駅の廃止と車両性能の向上で普通列車

所要時間が平均13分、最大で31分短縮されたことがとても印象に残っています。

 

 

途中、霧に包まれました。

 

朝の風景が美しい。

 

 

『ぴっぷ』、『らんる』と、北海道らしい読みの駅名が続きます。

 

蘭留駅を過ぎると、車窓は近くに緑に。

塩狩峠超えの区間となり、エンジンを唸らせながらキハ54は上っていきます。

 

峠の頂点付近に塩狩駅があります。

 

上り列車との交換のため2分ほど停車します。

 

上り旭川行きはH100形の3両編成。

時刻は6時44分。上りの始発列車です。

 

峠を下りきって、わっさむ。特急停車駅です。

 

宗谷本線に並行して、高速道路(道央自動車道)が走ります。

現状、士別まで開通しており、JRはバス等と競合しています。

宗谷本線には稚内まで3往復の特急列車の他、名寄以南で停車駅を絞った列車

『快速なよろ』が4往復運行されています。

 

旭川から67分、士別に到着。

大きな駅で、ここも特急停車駅です。

時刻は7時過ぎで、日曜とはいえ多くの乗客が旭川行きの列車を待っていました。

一方で名寄方面の稚内行きには見向きもされないというか全然乗ってきません。

2両編成ワンマン運行で開く扉は前方1カ所のみなので乗客の動向を追っていました

が、ここまで乗車があったのは新旭川・永山・比布から若干名、

剣淵とここ士別で1名のみの乗車です。

 

士別も市街地は一瞬で終わり。一面畑の中を駆け抜けます。

 

士別から2駅目の瑞穂駅。

ここで初めての仮乗降場スタイルの板張りホーム駅。

先頭車両のドア付近のみがホームにかかり、それより後ろははみ出て停車。

踏切にかかってしまっています。

近年廃止された駅のほとんどがこのようなスタイルの駅で、

残る駅は貴重ですが、設備が簡素すぎる分、それ相応に利用が少ない駅が多いわけ

で、今後を注視する必要がありそうです。

 

さらに2駅先、名寄高校駅。通称Nステ。

2022年3月に開業した駅で、1.5kmほど旭川方にあった東風連駅を移転する形で開業。

名寄市街地の南端に位置し、高校生などが利用しています。

通学に使えそうな朝7時台には上下1本ずつ列車が停車します。

この列車がその下り方面通学列車にあたりますが、この日は日曜日のため、

1人だけが下車していきました。

 

多寄・瑞穂・風連と、ここまで名寄に向けて小駅でも1名ずつですが

乗車がありました。

 

よく整備されていそうな軌道を進んで行きます。

 

名寄本線の線路上に保存されている排雪列車、「キマロキ編成」が見えると

まもなく名寄です。

 

 

名寄駅

7時40分、名寄に到着。 旭川から約1時間40分。旭川起点で76.2km地点にあります。

 

ちょうどこの日、名寄駅は開駅120周年を迎えていました。

『次はゆっくり寄ろーな』

列車で通り過ぎてしまう私たちに語りかけているようです。

 

名寄駅は宗谷本線の途中駅で一番大きな駅。

かつ運行上の拠点となっている駅で、列車の運行本数も当駅を境に

大きく変わります。

名寄駅からはオホーツク海方面に、興部・紋別・湧別を経て遠軽までの名寄本線

内陸の極寒地である幌加内・朱鞠内を経て深川までの深名線が分岐していましたが、

それぞれ1989年、1995年に廃線となっています。

 

広い構内はかつてのターミナル駅を物語っています。

 

名寄駅では13分間停車します。

2両編成で来ましたが、ここで後ろ1両を切り離し、この先は単行運転となります。

列車番号も変わります。

 

名寄駅では乗客の大多数が下車。後ろの車両から乗り移ってきた人もいましたが、

それでも全部で30人くらい。そのうち8割以上は乗り鉄とみられる人たちでした。

そんな乗車率で名寄駅を出発します。

 

 

名寄以北の宗谷本線

 

名寄を出ると、宗谷本線は天塩川という川に沿うようになり、山の中へと入って

いきます。終着の稚内まで180km以上ありますが、途中に人口4千人を超える

自治体がなく、人口希薄地帯を走行します。

列車の運行は特急列車が3往復(うち1往復は指定日に運休)、普通列車

区間によりますが最大4.5往復(音威子府幌延は3往復)と大幅に減少します。

天塩川沿いに蛇行した線形となるため、高速化工事も行われていません。

2016年11月、JR北海道は名寄~稚内間を、『JR単独で維持することが困難な線区』

として発表し、沿線自治体と今後の維持に向けた協議に入っています。

2021年3月、名寄~稚内間33駅のうち12駅が廃止、15駅が自治体による管理に

移行しています。(管理移行後、翌年さらに1駅廃止)

特急通過駅の利用者はほぼ全ての駅が1日に3名を下回っている状況で、

最北の鉄路は、それだけ厳しい環境におかれています。

 

 

名寄から4km。最初の駅は日進駅。

ホームから外れたところに立派な待合室があります。

日進の間のマークは名寄市の旧市章だそうです。

 

この駅も板張りの短いホーム。

手作り感ある看板が味を出しています。

駅巡り勢と思われる人が1名下車していきました。

 

次の智恵文駅までは11kmありますが、間に廃駅を2つ挟みます。

 

 

智恵文駅から比較的短い距離にある智北駅。

ここも駅舎はなく待合室のみの駅です。

 

いったん天塩川とさよならして平地に出て、牧場や畑の中を進みます。

 

8時17分、美深に到着。特急停車駅です。

 

列車交換のため4分停車します。

美深駅からは、かつて日本一の赤字ローカル線だった美幸線が分岐していました。

1985年に廃止されています。

 

対向は稚内を早朝5時21分に出発した名寄行き普通列車

旭川より稚内の方が始発が早いようです。

混雑している様子はありません。

 

同時に稚内行きも出発します。

 

美深の市街地を一瞬で抜け、牧場地帯を走るとやがて再び

天塩川沿いのわずかな平地を蛇行しながら走るようになります。

 

清水信号場で、稚内を6時36分に出発した特急サロベツ2号とすれ違います。

この信号場も豊清水駅として2021年3月まで営業していました。

 

駅舎は残っていますが、島式のホームは崩されてしまっています。

 

天塩川温泉駅。板張りホームの仮乗降場スタイルの駅。

踏切にかかって停車しています。音威子府村管理の無人駅。

温泉への最寄り駅ではありますが、送迎バス等は特急停車駅である

2駅先の音威子府駅発着となっているようで、アクセスの役割は終えています。

 

9時05分、音威子府に到着。

所要時間・距離ともに、ほぼ中間地点にあたります。

 

 

長くなっているのでここで一旦区切ります!

最果てへ向かう普通列車の旅、この先はまた次回。お楽しみに。