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【肥薩線応援】九州縦断破天荒旅行記【2019年9月】③

2019年9月の九州縦断旅行記、二日目の前半をお届けします。

 

この日は熊本からJR肥薩線を経由して鹿児島県へと向かいます。

 

※令和二年七月豪雨災害により長期運休中のJR肥薩線

被災前の様子を掲載すると共に、災害復興と運転再開への

応援の意味合いを込めてお送りいたします。

 

 

おはようございます。

時刻は朝7時40分、熊本駅です。

 

 

 

 

 

ここでお知らせがございます。

 

 

乗車予定の特急『かわせみ やませみ』に間に合いませんでした。

 

 

 

 

敗因は自由席特急券を事前に購入していなかったこと。

土曜日とはいえ、券売機に行列ができており、

それを考慮せずに宿を出たことからタッチの差で間に合いませんでした。

 

 

 

いや、本当に惜しいことをしました。

乗車できていれば人吉で観光の時間がとれたのに。

 

 

 

 

幸いなことに1時間の続行で特急『いさぶろう』がありますので

それに乗車します。

 

もともとの人吉からの乗車列車がこの『いさぶろう』。

熊本への入出庫の関係で特急として一往復、客扱いを行っています。

 

 

8時10分ごろ、列車が入線してきました。

キハ47形改造の2両編成です。

デザイナー水戸岡氏の手にかけられたD&S(デザイン&ストーリー)列車。

この手のD&S列車に乗車するのは初めてで非常にわくわくします。

 

熊本〜人吉の球磨川沿い区間を特急、

吉松まで、日本三大車窓を含む風光明媚な区間普通列車として走ります。

もともとは人吉〜吉松間の観光普通列車用として改造され、

熊本に顔を出すようになったのは2016年からのことです。(2017年特急化)

 

車内はこんな感じ。

普通列車としての使用が前提のため、多くはレトロ調のボックスシートです。

特急運用時、写真の区画は指定席。

 

自由席区画は運転台側車端部のベンチロングシートです。

このお椅子に3時間弱座ります。

(かわせみ やませみなら885系並のリクライニングシートでした)

 

運転台すぐ後ろの壁には前面展望が映し出されるディスプレイが。

前面展望しづらいこの形式でこれは助かる。

 

運転台。

小綺麗になっていますがキハ40系列そのままです。

 

改造前のタネ車とほぼ同型の三角線普通列車を横目に

熊本駅を出発します。

車内は休日にしてはやや少ないのではないかという乗車人数。

 

乗車記念のポストカードをもらいました。

八代までは鹿児島本線を快走します。

 

特急『いさぶろう』、ワンマン運行ということにはなっていますが、

客室乗務員さんが1名乗車されていて、検札と観光案内、車内販売を担当されています。

運行業務と詳細な旅客案内は運転士、というふうに分担がされているよう。

 

新八代で再び九州新幹線と交差します。

 

八代駅肥薩線の起点とあります。

肥薩線の方が現在の肥薩おれんじ鉄道線区間より先に開通し、

鹿児島本線を名乗っていた時代がありました。

それだけ古く、歴史ある路線。

産業遺産とするべきものがたくさん残っています。

 

肥薩おれんじ鉄道線(旧JR鹿児島本線)をアンダークロスする形で

肥薩線球磨川沿いに内陸へと進んでいきます。

 

球磨川を右手に見て走行してきた肥薩線

ほどなくして球磨川第一橋梁で球磨川を渡ります。

案内放送と共に徐行して橋梁を通過。

 

アメリカの技術による、100年以上の歴史を持つ立派な橋梁で

肥薩線の名物であったこの橋梁は、令和二年七月豪雨による球磨川の増水で流されてしまいました。

この橋が直らない限り肥薩線の復旧は望めません…

自然の恐ろしさと近年の気候の激しさを思い知らされます。

 

今度は球磨川を左手に見て列車は進みます。

 

平時の球磨川の景色は本当に美しいです。

 

八代から先、肥薩線内は坂本、一勝地、渡と停車していきますが、

他の小駅はすべて通過していきます。

大きな町も見当たらず、沿線利用がどれくらいあるのか気になってしまいました。

 

石造りの機関庫が見えると人吉駅

熊本から約1時間半で到着です。

 

人吉駅

くま川鉄道湯前線との乗り換え駅でもあります。

 

看板類がとてもレトロ。

対向の普通列車はキハ40の単行です。

 

温泉あり、鉄道博物館あり、

人吉にはぜひ時間を作って立ち寄りたかったです。

 

人吉駅はわずか4分の停車。

ここから普通列車となり、「矢岳越え」の区間へと入ります。

 

肥薩線の人吉〜吉松は、熊本・鹿児島の県境。

文字通り肥後と薩摩の境の閑散区間で、定期列車はわずか3往復。

うち2往復がこの『いさぶろう/しんぺい』で運転されています。

列車名の由来は、同区間開通時の逓信大臣、山縣伊三郎と

鉄道院総裁、後藤新平

現行の鹿児島本線ルートよりも先に九州を縦断すべく、

欧米の技術を駆使して難工事により建設された峠越え区間です。

あまりの地形の険しさに欧米の建設技師が匙を投げ、

視察により技術を得た日本人の独力で建設が進められたという逸話が残ります。

 

 

急勾配を登り続けること10km。

列車は大畑(おこば)駅に到着。

左へ分かれていく線路は当駅より先のループ線

 

大畑駅は日本国内唯一のループ線内にスイッチバック構造を伴う駅です。

 

スイッチバックの終端にホームがあり、列車は切り返して出発。

奥の行き止まり線に進んでから、再度切り返して

写真右手のループ線へと進んでいきます。

この位置からでもループ線が登っているのがわかりますね。

 

吉松までの途中の三駅にはそれぞれ停車時間が設けられ、

駅構内を散策することができるようになっています。

それだけ見所の多い区間です。

 

給水塔。

SL時代の峠越えには欠かせない設備です。

 

これまたレトロな駅舎の内壁にはびっしりと名刺が貼られていました。

貼ると出世するジンクスがあるのだとか。

 

大畑駅を出発した列車は一度、行き止まりの線路へ。

加速線と呼ばれる、SLが購買に差し鰍ゥるまでに勢いをつけるための設備です。

 

ループ線を上ると、眼下に先ほどまでいた大畑駅が見えました。

 

次は矢岳(やたけ)駅。

この区間で一番高いところにある駅です。

 

駅に併設されたSL展示館には、

肥薩線仕様のD51蒸気機関車170号機が展示されています。

 

多くの人はSLを見に行ってしまいましたが、この駅の

木造駅舎も立派なものです。

 

矢岳駅を出ると下り勾配にに転じます。

しばらく走ると…

 

霧島連山とえびの高原を望む絶景ポイントが。

日本三大車窓に数えられるビューャCントで、

列車は最徐行・一時停止してくれます。

 

次は真幸(まさき)駅。

ここもスイッチバック駅で、一旦駅横を通り過ぎます。

この時点でこの標高差です。

 

後退してホームへ。

駅舎では特産品の販売が行われます。

 

駅名に対して災害に多く見舞われる地域で、

周囲は集落移転で無人に。

土石流災害で転がってきた岩が記念碑的に置かれています。

 

ホームには『幸福の鐘』があります。

 

 

こうして数々の名所のある難所を越えてきた普通列車『いさぶろう』は

終点の吉松駅へ。

 

吉松駅。吉都線の分岐駅です。

同じくD&S列車の特急『はやとの風』に接続します。

 

吉松11:25→鹿児島中央12:53 特急はやとの風1号 鹿児島中央行き

 

木材を多用した明るい車内。

『いさぶろう/しんぺい』と共に2004年3月の九州新幹線部分開業時から走る

肥薩線のD&S列車です。

こちらは当初から特急列車ということでクロスシート中心の車内配置。

車両中央に展望スペースがあります。

 

 

肥薩線内、途中二駅で停車時間が設けられています。

 

大隅横川駅

1903年開業当時の木造駅舎がほぼ原型を留めたまま残ります。

 

嘉例川駅

 

こちらも木造の立派な駅舎が残る駅で、鹿児島県内最古とされている。

TV番組で関口知宏氏と話す名誉駅長さんが印象的だったなあ。

 

 

この嘉例川駅が名前となっている駅弁を購入しました。

『百年の旅物語 かれい川』。

 

中は筍ごはんや、かきあげなど。

とてもおいしかったです。

 

錦江湾桜島を望み、列車はまもなく鹿児島に着きます。

 

 

鹿児島中央駅より先は次回。

いよいよ旅は【破天荒】なものへ? お楽しみに。

 

 

令和二年七月の豪雨災害以降、

JR肥薩線の八代〜吉松間と、第三セクターくま川鉄道湯前線の全線が

運休したままとなっています。

橋梁が数本流失しているため復旧には費用と時間がかかるものと思われます。

特に肥薩線は地域利用が乏しいため、仮に鉄道で復旧できても

頼みの綱は観光利用となることでしょう。

復旧の暁にはまた乗りに行きます。

今度はSL人吉号で、人吉の町を訪れてみたいものです。